夏休みの楽しみ方として
日本でもすっかり定着したのが
ロックフェスティバル です。

夏になると各地で毎週のように開催され、
フジロック(新潟県)は10万人、
ロッキンジャパン(茨城県)は17万人、
サマーソニック(ZOZOマリンスタジアムなど)は23万人と、
その規模を年々拡大させてきました。

自然の中などの非日常空間で、
音楽に身を委ねる気持ち良さの虜に
なってしまった方も 多いのではないだろうか?


日本では、誕生してまだ20年ほどの
ロックフェスティバル。
どのような経緯で音楽シーンに誕生したか、
皆さんはご存知でしょうか?


暑さが徐々に消え、
初秋の雰囲気を徐々に感じてくる今だからこそ、
頭もクールダウンして、
歴史を振り返ってみましょう。


一般的には、1969年8月15〜18日に
アメリカのニューヨーク州にある芸術の街、
ベセルで行われた
「ウッドストックフェスティバル」
ということになっています。

2019年には華々しく50周年を
迎える予定だったこのフェスでしたが、
さまざまな事情が重なって
中止になってしまいました。
もしかしたら交渉の状況を伝えるニュースを
目にした方もいらっしゃるかもしれません。


1960年代当時の話題に戻しましょう。
当時のアメリカは、ベトナム戦争の真っ只中。
一向に終わらない戦争に、
アメリカ国民も不安や苛立ちを感じていた時期でした。
その他にも、黒人をはじめとする人種差別や、
LGBTのような方々の差別も問題になっており、
各地で差別解消の運動が広まっていました。
政府に対する不信感が積もりに積もっていた、
そんな時代です。


そんな不安定な社会情勢のなか、
「愛と平和」 というスローガンの下で開催されたのが、
この「ウッドストックフェスティバル」です。


ザ・フー、ジミ・ヘンドリックス、
ジョーン・バエズ、
ジャニス・ジョプリンなどの
錚々たる面々が30組以上出演、
総勢40万人の観客が会場に集い、
大成功を収めました。

華々しい金字塔を打ち立てた
「ウッドストックフェスティバル」、
その会場に集まったのは、
「ヒッピー」
と呼ばれる人々でした。


独特なファッションが話題になるヒッピーですが、
彼らは「政府とか政治なんて、
俺らの生活を豊かにしてくれるわけじゃないし
意味ないんじゃね?」とか、

「音楽で政府に対する不満や、
戦争反対の想いを訴えよう!」

といったような政治に対する
強い反抗心がある人です。

そのようなこともあり、
「自然に帰って自由に生きよう」、
「文明化される前の生活に戻そう」
といったことを強く訴えていました。


近年、日本では、
「フェスで政治的主張をするのはどうなんだ?」
という意見が聞かれることもあります。
音楽を純粋に楽しみたい人にとっては、
政治的な主張は邪魔なものでしかありませんし、
それはそれで真っ当な主張であると思います。


一方で、ロックフェスティバルそのものが
「反政府」の主張から始まっているものです。
そのため政治と強く結び着いてしまっているのは、
良いかどうかはさておき、
本来の姿であるとも言えます。


近年では、商業方向にシフトした
フェスも多く開催されているので、
政治色は薄められつつある傾向も見られます。
CDのセールス減少や、聴き方の変化に伴い、
ロックフェス自体も時代にあったものに
変化していくことでしょう。


夏も終わりを迎えた今だからこそ、
ロックフェスの余韻に浸りながら、
歴史や未来について思考してみると、
意外なものが見えるかもしれません。

文2019/09 文/白鳥純一